交通事故の損害費目の中で比較的大きな割合を占めるのが「休業損害」です。この休業損害は、被害者が給与所得者の方であれば、給与明細書や源泉徴収票を基に収入額を把握し、休業損害の額を算定しますが、自営業者の方の場合は、確定申告書の写しに基づいて休業損害の額を算定するのが通常です。
確定申告の申告額を過小に申告していた場合、実際の収入額が申告額以上であることを立証できれば、実際の収入に基づく損害の賠償を求められる余地はありますが、立証は極めて厳しいものとなるでしょう。
では、そもそも何らかの事情で確定申告書を提出していなかった場合、交通事故の被害を受けた自営業者の方は休業損害を一切請求できないのでしょうか?
確定申告書は、自営業者の方が事業を営み所得を得ていたことを示す資料に過ぎませんから、何らかの事情により確定申告書を提出していない場合でも、その方が無職者と評価されない限り、休業損害を請求することは可能です。しかし、任意保険会社との示談交渉では、休業損害の査定にあたり、不利な取扱いを受けることは必至で、交渉が行きづまる原因となりえますし、訴訟を提起しても収入額についての立証が難しいですから、被害者にとって不満の残る判決が下される可能性もあります。自営業者の方は、正確な申告に常に留意し、励行するよう心がけましょう。