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遺産分割前の同居相続人の地位

他界されたお父様の相続が問題となり、法定相続人相互間で残遺産の処理について協議を行なう際には、生前のお父様の扶養を相続人のなかで誰か行ってきたか等、お父様のご生前の事情等が持ち出され、相続人間で複雑な感情的対立が生ずることがあります。

特に、相続人だけではなく、相続人の配偶者(義理の息子や娘)が遺産分割等の問題に介入してくることも珍しくはなく、遺産分割協議が紛糾することがしはしば起こります。

法定相続人のなかで、例えば、長男等特定の相続人が病床にあったお父様の介護等を行い、その介護等の費用も負担し、お父様の財産の維持または増加について特別の寄与をする等された場合には、「寄与分」といってその方は法定相続分以上の額を相続分として取得できる場合があります(民法第904条の2第1項)。

共同相続人間の実質的公平に配慮した規定であり、寄与分の額をどのように定めるかは共同相続人間の協議で決めることになりますが、協議が調わないときや協議することができないときは家庭裁判所に寄与分を定めてもらうことになります(民法第904条の2第2項)。

上記の例で、例えば、他界されたお父様名義の不動産にお父様の同意を得て長男が居住し、お父様の介護等を行ってきた場合に、お父様が他界された後、その遺産たる不動産について、その不動産に居住している長男は、当該遺産を相続した共同相続人に対し、遺産たる不動産に居住していることを理由に賃料相当額の金銭の支払義務を負うのでしょうか?

お父様が他界された後の不動産は相続人の共有状態(民法第898条)となりますから、特定の相続人が排他的にこれを占有使用する場合には、その相続人は、各相続人の共有持分に応じた賃料相当額の金銭の支払義務を各相続人に対し負担するとも考えられます。

これつき最高裁は、「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情がない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合には、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。」と判示し(最高裁平成8年12月17日第三小法廷判決)、共同相続人間での遺産分割協議が終了するまでは特段の事情がない限り被相続人の許諾を得て同居していた相続人について他の相続人に対する金銭の支払義務がないことを明らかにしました。極めて常識的な判断であり理論構成は別として結論としては評価されるべきものです。