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独占禁止法と知的財産権 その3

知的財産権と独占禁止法上の「不当な取引制限」との関係では次の事案が参考になります(不当な取引制限の意味については法律相談30分5250円の不可思議の項目を参考にしてください。)。

ある事業者が、地方公共団体の調達に係る公共下水道用鉄蓋について、当該事業者の実用新案を取り入れた仕様が当該実用新案を他の事業者にもライセンスすることを条件に採用されていたところ、事業者が他の事業者6社に対して当該実用新案をライセンスするとともに、6社が地方公共団体に提出する当該鉄蓋の見積価格を、実用新案を有する事業者の見積価格以上にすることとし、工事業者渡し価格や工事業者のマージン率を決定したことが独占禁止法上の「不当な取引制限」に該当するとされた事案があります(平成5年9月10日公正取引委員会審決)。実用新案権をライセンスするに際し、事業者相互間でライセンスに係る鉄蓋の価格を一定の価格以上とすることを共同して決定すれば、鉄蓋の価格は公正且つ自由な競争のなかで形成されず、不当な価格形成がなされることは明らかで、公共の利益に反して競争を実質的に制限する競争減殺効果が認められますので独占禁止法に抵触するものと判断されました。

知的財産権と独占禁止法の関係を「私的独占」や「不当な取引制限」の観点から参考事例を基礎にご説明してきましたが、知的財産権の行使が独占禁止法に違反する場合についてはその明確な準則は確定しておらず、個別事案において個々の事情を基礎に抵触の有無が検討されることになります。一般論としては、知的財産権の行使が知的財産権の趣旨や目的を考慮してその付託された趣旨を逸脱すると認められる場合には、知的財産権の行使は正当なものと評価されず独占禁止法との関係で抵触を生ずることになります。ただ、趣旨の逸脱といっても極めて曖昧な概念であり如何なる場合に知的財産権の行使がその付託された趣旨を逸脱しているものと解釈できるのかは微妙な場合も少なくなく、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等の知的財産権の実施、使用を許諾される等、ライセンシーとの間でライセンス契約を締結するに際しては、公正取引委員会や弁護士、弁理士に対し独占禁止法との関係で疑義がないかを事前にご相談されることをお薦めします。

公正取引委員会では、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」としてガイドラインを明らかにしていますが、独占禁止法違反の有無の判断については、終局的には、個別事情を考慮した総合的判断によるものとされるため裁量的要素も大きく明確性の点ではやはり課題を残しているものと思われます。