経済不況が長期にわたるなか学生さんの就職先としては公務員に人気が集中しているらしく、安定的な就職先を選択する人達が依然多いようです。厳しい競争社会である隣国の韓国でもこの傾向は同様で公務員試験に合格するための情報や受験技術を取得させるための受験産業は隆盛を極めているそうで、公務員として採用されるため厳しい学力競争が展開されています。
他方、我が国では最近、地方分権が叫ばれていますが、その内容はともかくとして地方公務員、とりわけ市町村レベルの公務員の採用では学力面での選抜試験だけでなく、職員の採用にあたり面接が重視される傾向があり、地元の市会議員の推薦等いわゆる「コネ」による採用がなされていると聞かされることがあります。
厳格な選抜試験であれ、推薦されたものであれ、志願者の目的は公務員になることですが、公務員になることの目的が市場での厳しい競争に身をさらすことを回避し、安定的な職業的地位を確保することであるとすれば、我が国の先行きは大変、暗く、特に優秀な人材を確保できない地方の衰退に今後、ますます拍車がかかることはほぼ確実でしょう。
弁護士会では、弁護士の存在しない地域を弁護士過疎地域と称して、弁護士を地域に定着させる活動をしていました。弁護士は本来、民間の事業者であるにもかかわらず、弁護士会は、過疎地域で開業する弁護士に所得保障をし、開業をさせることで過疎地域をなくそうと考えたのです。
弁護士過疎地域は、事務所の開設を希望する弁護士がその地域は不便で儲からないと考えたから形成されただけのことであり、過疎地域が形成されることは自然の流れです。多くの弁護士は生まれ育った地域を離れ儲かる便利な場所で事務所を開設します。ところが弁護士会は地域のため等とお為ごかしに過疎地域対策を提唱し、弁護士の所得を保障してでも過疎地域を解消させようとしました。この所得保障は弁護士会の会費から賄われており、私のように法律事務所が殆どなかった地域に事務所を開設した弁護士も過疎地域の弁護士のために会費を拠出しており、いわば、過疎地域に弁護士会から補助を受ける法律事務所と私の事務所のように過疎地域でも弁護士会等から一切の補助を受けない二種類の法律事務所が存在していることになります。
地域に弁護士を派遣したり、その地域で所得保障をつけて事務所を開設しても所詮、長続きはしませんので、地域で執務をした弁護士もしばらくすると都市部に戻ってしまうことが多いのです。所得保障を受けた弁護士が優秀であるとは限りませんから、地域に弁護士を定着させればいいというものではなく、弁護士会の過疎地域対策というものも地域のことを真剣に考えているのか疑問を払拭できません。
弁護士の例でもわかりますが、地域に優秀な人材を定着させ地域の活性化を図るためには何が必要なのでしょうか。