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不正競争防止法上の営業秘密とその「管理」

Corporate Law
ある情報が「営業秘密」であると不正競争防止法上、評価されるためには、
  • その情報が公然と知られていない非公知情報であること、
  • 情報が事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること、
  • 情報が秘密として管理されていること
が必要となります。また、通常は②の要件を欠くものと評価される場合が多いでしょうが、情報の内容が公序良俗に反する場合は、その情報はそもそも法的保護を受けることはできません。ですから、覚せい剤等違法薬物の製造保管マニュアルやその販売先を記載した顧客リスト等が「営業秘密」に該当しないことは言うまでもありません。
ある情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に該当するかどうかでもっとも問題となるのは「管理」の要件です。
情報を管理するためには、そのための物的、技術的、人的措置を講ずることが必要で、情報管理のための管理コストの負担を覚悟しなければなりません。
ですから、企業が保有する情報のうち、企業が主観的に「秘密」として評価している情報であっても、不正競争防止法上の保護を受けることを意図される場合には、その情報のうち、充分な管理コストを負担してでも法的に保護の対象としたい情報は何かを精査、吟味しその管理体制を確立することが必要となります。
情報が秘密として「管理」されているというためには、その情報にアクセス可能な者が限定されているかが一つの指標となります。
社内の誰でもがその情報に接することができる状態に置かれていたという場合には、「管理」の要件を欠くものとして不正競争防止法の保護を受けることができない可能性が強まります。
情報に対するアクセス権者を制限し、情報が電子情報として集約されている場合は、パスワード等を施す等、情報に容易に接することができない工夫を図るべく平素から配慮することが大切となります。
また、社内の秘密情報保持のための内規を予め策定し、情報の管理者、管理の方法、アクセス権を有する者の範囲等を規定し、内規に従った電子情報等の管理保持と情報に対するアクセス制限を実施する等の措置をとる等の体制を構築することも大切となります。
情報が紙媒体に化体されている場合であれ、電子情報とされている場合であれ、その情報が秘密であるということが客観的に認識できる状態に置かれていることも「管理」の要件を基礎づけるうえでは重要な一つの指標となります。
ですから、顧客情報が紙媒体に化体されている場合には、その紙面上に「秘密」であることを窺わせる標を記載し、注意を喚起させることも大切となりますし、電子情報の場合は、情報そのものに秘密性を窺わせる記録を挿入することが必要となります。
不正競争防止法上の「営業秘密」の要件を充たすためには、ある情報が「管理」されているという実態を有することが必要ですが、情報の管理のためには一定のコストの負担が必要となります。
ですから、やみくもに主観的に秘密としたいすべての情報についてコストをかけて管理するのではなく、情報の内容を選別し、特に重要な秘密情報については相当の管理コストをかけて高度な管理体制を施す等、情報を保全する体制を構築することが必要となるでしょうし、重要性の上で劣位にある情報についてはコスト上の負担を軽減する等、情報のレベルに応じた管理体制を実施していくことも必要となりますが、それは、各々の企業における経営政策の観点からの秘密保持政策の問題となります。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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