HOME >
『企業法務・労働問題・知的財産について』
> 『先輩もいろいろあります-商標の先使用権-』
先輩もいろいろあります-商標の先使用権-
Corporate Law
わが国では、先輩と後輩の人間関係は、時として大変、複雑な場合があります。
初等・中等教育の過程では、大抵の場合、年上の者が先輩で、年下の者は後輩になるのが通常です。
小学校時代は上下関係を意識しなかった学年による先輩後輩の関係も、中学校に進学すると変化し、学年(年齢)の上下に応じて先輩後輩の人間関係に上下の関係が形成されていきます。
ところが、大学に進学した場合や社会人として企業等に就職した場合には、浪人、留年その他の理由により、「年下の先輩」、「年上の後輩」が現われることがあり、年齢による上下関係と先輩後輩の上下関係に齟齬が生ずることがあるため人間関係が複雑になります。
また、企業内では部下であった後輩が先輩を飛び越して昇進することで後輩が先輩の上司になることがあり、人間関係が一層、複雑になってしまうことが往々にして見受けられます。
先輩後輩の関係は多分に複雑ですが、ある組織に先に入ったとか、年齢が上である等といった要素は、「先輩」を上位者として仰ぐうえで決定的な要素ではないものと思われます。「年を問わんより世を問え」の格言のとおり(更に重要なのは、人生経験よりも後進に技能を継承可能な先達としての的確な指導力です。)、先輩として大切なことは、その先輩が、年齢が上であるとか、その道の先達として力量の上で優れているというだけでなく、その存在に学ぶべき点が多く後進を自然と惹きつける魅力を持っているかどうかということではないかと思われます。
その先輩に後輩の先を歩んで来た人として積み重ねられた「人としての深み」があることが大切だと思われるのです。
「先輩」は星の数ほどいても「尊敬すべき先輩」はそれほど多くはないのが通常でしょう。
商標法は、先願主義を採用していますので(商標法第8条)、商標法の世界では、原則として同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について、複数の商標登録出願があった場合には、先の日に出願し登録された標章が商標として認められますから(商標法第18条1項)、出願及び登録の先後関係は極めて重要となります。
言わば、商標法の世界では、先の日に出願及び登録された標章が「商標」として認められ、先輩として絶対的地位を取得することになり、原則として後輩の存在を認めないものと言えます。
しかし、商標は、商標それ自体に意味があるわけではなく、究極的には、商標に化体された業務上の信用を保護するものですので、他人の商標登録出願前から日本国内において当該商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標を使用していた者は一定の要件のもとに商標の使用を認められる場合があり(商標法第32条)、先願(登録)主義の例外が認められています。
他人の登録出願以前に当該標章を使用している場合はそこに一定の業務上の信用が形成されている場合があり、未登録ではあっても一定の法的保護を受けることができるのです。ただし、商標法上、保護されるためには、
- ①他人の商標登録出願時において使用している当該商標(標章)が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者間に広く認識されていること、及び
- ②日本国内において不正競争の目的でなく使用されていること
が必要となります。
先使用の未登録商標は、標章利用の点では、登録商標の先輩にあたりますが、先輩として法的な効果が認められるためには、ただ他人の商標登録出願以前に使用がなされているというだけでは足りず、その商標(標章)が需要者間で広く認識されているといった周知性等の要件を充たすことが必要となります。
商標法の世界では、先輩であることを主張するためには、それなりの条件が必要とされるということでしょうがこれは人の世界でも同様だと思われます。
企業法務・労働問題について法律相談を希望される方 →
法律相談のページへ
知的財産について詳しく知りたい方 →
知的財産特集のページへ
京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
ページトップへ
個人情報取扱いの指針
当法律事務所は、個人情報の保護に関する法律及びこれに関連する政令、ガイドラインを誠実に遵守し、提供された個人情報を適切に保護致します。
当サイトにおいて提供を受けた個人情報は、法律相談及びこれに基づく法律事務の範囲でのみ利用するものとし、当サイトにおいて表示する当法律事務所の役務において提供を受けた個人情報については、提供者が提供の際、明示の反対の意思を表示されない限り、当該役務遂行の目的の範囲で当法律事務所が当該個人情報を利用することについて同意されたものとみなします。
当法律事務所は、法律相談及び法律事務を承るに際し、犯罪収益の移転及び資金洗浄防止の目的で、法人、個人の身分確認のため必要な個人情報を含む身分確認情報のご提供を求めることがあります。この目的で取得した個人情報については、前記目的の範囲に属するものと致します。
個人情報提供者が、当法律事務所の内規において定められた保存期間内で、当法律事務所が保存している当該提供者の個人情報について開示等の請求をされる場合は、当法律事務所所定の手数料及び個人情報提供者の身分確認のための資料をご提出いただく必要があります。この資料は、開示等請求者の身分確認のためにのみ使用し、開示等の後は速やかに破棄致します。