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秘密保持契約(NDA)の隠れた落とし穴その②

Corporate Law
秘密保持契約の合理的解釈により秘密保持義務を負担する者の範囲を、契約を締結した企業等だけでなくその構成員を含むものと解釈することで秘密保持契約の規範的拘束力を確保することは充分可能であると考えられます。
契約の合理的解釈により企業等の構成員に契約の拘束力が及ぶことを前提とすると、契約を締結する際、一部の構成員に契約の拘束力を及ぼさせたくない場合はその旨を明記することが逆に必要となりますし、契約の拘束力が及ぶ人的範囲について後日、疑義を残さないためには、秘密保持契約を策定されるに際し、契約の拘束力の及ぶ人的範囲または及ばない人的範囲について特別の条項を予め設定する工夫が必要となるでしょう。
ところで、秘密保持契約の合理的解釈により企業等の構成員に対し、締結した秘密保持契約上の秘密保持義務を負担させることができるとしても、それは、その構成員が当該企業等に就業している場合であり、企業等を退職等した場合にまで妥当するわけではありません。
企業等の構成員が企業等を退職した場合には、その退職者は企業等の関係者ではありませんので秘密保持契約書を合理的に解釈しても退職後の構成員等に秘密保持契約の拘束力を及ぼすには限界があるものと思われます。
しかし、企業等の構成員が退職後に秘密保持義務の拘束力から解放されてしまうとすると、在職中に知得した秘密情報を退職後、外部に流出させることも考えられ、秘密保持契約の拘束力は大きく減殺される結果となってしまいます。
「従業員との契約も必要です。」のタイトルで知的財産の保護のため従業員との間で契約を締結する必要があることに触れましたが、秘密保持契約を締結されるに際しては、開示された秘密情報について、流動性のある従業員等に対し予め退職後についても秘密保持契約上の秘密保持義務を負担させる旨の就業規則の策定や退職時の誓約書等の徴求等を行う等、秘密保持義務をその退職後にも波及させるための工夫が必要となります。
秘密保持契約を締結される企業等は、自己の構成員に対し退職後も知得した秘密情報を流失させることがないよう周知徹底し、内規を策定すること等によりその実効性を担保する必要がありますが、同時に契約締結先の企業等について、当該措置が講じられ信頼関係を構築することが可能かどうかを充分、検証したうえで契約を締結することが不可欠の課題となります。
秘密情報の保全に対し深い理解を示し実践していることはその企業等の価値を高め周囲の信頼を確保するうえでも重要な要素となるのです。
長年の歳月により構築された企業等の信用が一度、破壊されるとその回復が著しく困難であることと同様に、秘密情報は、その情報が一度、流出してしまうとその価値の回復は著しく困難であるとともにその損害額の算定も容易ではありません。
ですから、秘密保持契約の締結は、契約書の策定や契約相手方の選定も含め細心の注意を払って慎重に行われるべきものであり、秘密保持契約の締結が形骸化している現在の状況には企業等が今後、国内だけでなく国際的にも活動の舞台を拡大させていくうえで憂慮すべき問題を孕んでいるものと思われます。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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