不動産の賃貸物件を探し求められる際、不動産業者の店舗を訪問され仲介不動産業者から賃貸物件の斡旋を受けられた方は多いと思います。不動産業者は、国土交通大臣または都道府県知事から免許を受けて宅地建物取引業者として宅地建物取引業法に基づき「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介する行為」を業として行うことができます(宅地建物取引業法第2条1項2号参照)。不動産業者による賃貸物件の仲介斡旋は、宅地建物取引業法上の「建物の…賃貸の代理若しくは媒介」(その多くは「媒介」です。)として宅地建物取引業者の業務の範囲に含まれますので不動産業者が賃貸物件の仲介斡旋を行うこと自体は問題のない行為であることは言うまでもありません。
ところが、多くの不動産業者は賃貸物件の仲介だけでなく、賃貸物件の「管理」と称して建物所有者と賃借人との間で建物賃貸借契約が締結された後に賃借人から賃料を回収管理し、受領した賃料を建物所有者に手数料を控除して引き渡す等の業務を行っており、時には、賃料の回収管理だけでなく、賃借人による賃料不払いの場合の賃貸借契約の解除手続の代行や建物の明渡しの示談交渉等を行っている場合も見受けられます。
しかし、宅地建物取引業法は宅地建物取引業者に対し「賃貸の代理若しくは媒介」を業として認めているだけですから、不動産業者が滞納した賃借人の賃料を回収するため賃借人との間で示談折衝を行ったり、賃料不払いの賃借人に対して建物賃貸借契約を解除する意思を表示し建物の明渡しを求めて賃借人との間で示談交渉を行うことは弁護士法が規定する「一般の法律事務」(弁護士法第3条1項)を弁護士の資格のない者が取り扱うことになりますので弁護士法に抵触する非弁活動の可能性が濃厚です。
弁護士法は、弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で一般の法律事件に関して代理、仲裁若しくは和解その他法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることを禁止しており(弁護士法第72条)、違反した場合には2年以下の拘禁刑(刑法の改正により懲役・禁錮は拘禁刑に改められました。)又は300万円以下の罰金に処せられます。
ですから、賃貸物件の賃借人の方は、賃貸人から争いのある滞納賃料の回収や賃貸借契約の解除手続、明渡しの示談交渉を依頼された等と称して不動産業者が示談交渉等に関与してきた場合にはその資格を精査、吟味すべきです。ですから、賃貸物件の賃借人の方は、賃貸人から争いのある滞納賃料の回収や賃貸借契約の解除手続、明渡しの示談交渉を依頼された等と称して不動産業者が示談交渉等に関与してきた場合にはその資格を精査、吟味すべきです。
近年は、不動産業者の実質的な構成員と推定されますが、建物所有者及び不動産業者から委託を受けたと称して賃借人に対し建物から退去を強引に迫る「追出屋」が出現しており問題にされていますが、彼らの活動も、同様に弁護士法に違反する可能性が濃厚です。
賃貸物件を賃貸されている賃貸人の方は、不動産業者や「追出屋」を安易に利用することなく、弁護士にご相談のうえ適切な法的手続に従い賃借人との係争の解決を図ることにご留意ください。