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修繕義務の不履行と営業利益の損害

Real Estate

建物賃貸借契約において、契約当事者間に特約がない限り、賃貸物件たる家屋の修繕義務は賃貸人にあるのが原則です(民法第606条第1項)。賃貸人は賃借人に対し賃貸物件の使用・収益をなさしめるため必要な賃貸物件の修繕義務を履行する責任があり、これを怠ると債務不履行となります。

ところで、建物の賃貸借契約が店舗等営業活動の利用を目的として設定されている場合に、賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人としてはどのような措置をとることが可能なのでしょうか?

このような場合の対策については、家主さんが家屋の修繕を拒否したらのタイトルで述べましたが、賃料債務の履行の一部拒絶や賃料債務との相殺での対処が想定できます。ただ、実際に賃料の支払いを拒絶されたり、相殺をされる場合には、検討を要する課題もありますので、対処方法の適法性を検証するため弁護士に相談されることをお薦めいたします。

では、事業用に利用することを目的に家屋の賃貸借契約が締結されている場合、賃貸人に修繕義務があるにもかかわらず、賃貸人が修繕義務を履行しないため店舗営業が行えず賃借人に営業上の損害が生じた場合、賃借人は、賃貸人に対し営業利益の損害賠償を請求できるのでしょうか?

これにつき最高裁は、「事業用店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により当該店舗で営業することができなくなった場合には、これにより賃借人に生じた営業利益喪失の損害は、本条(民法416条)1項の通常生ずべき損害として賃貸人にその賠償を求めることができるが、賃貸人が修繕義務を履行したとしても、賃貸店舗の老朽化のため長期にわたって賃貸借を継続しえたとは必ずしもいえず、本件店舗以外の場所でも営業ができたなどの事情がある本件の場合には、賃借人が別の場所で営業を再開する等の損害を回避または減少させる措置を何らとることなく営業利益相当の損害が発生するにまかせてその損害すべてについて賠償を求めることは条理上認められない」と判示し(最高裁平成21年1月19日第二小法廷判決)、賃貸人の修繕義務の不履行と相当な因果関係の認められる営業利益の損害について賃貸人に賠償義務を認めています。ただし、判示も指摘しているとおり、賠償義務の認められる範囲については事実関係次第では限定されることもありますので注意が必要です。

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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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