HOME >
『企業法務・労働問題・知的財産について』
> 『改正不正競争防止法と刑事手続の特則-秘匿決定・呼称決定-』
改正不正競争防止法と刑事手続の特則-秘匿決定・呼称決定-
Corporate Law
不正競争防止法が改正され営業秘密侵害罪(同法第21条以下)に関する刑事手続の特則が施行されました(同法第23条以下)。
不正競争防止法上保護される営業秘密の侵害に対しては差止め(同法第3条)や損害賠償請求(同法第4条)等の民事上の救済措置の他、営業秘密を侵害した者(同法第21条以下)に対しその刑事責任を追及することも可能とされており、同法により、営業秘密を侵害された被害者に対し実効的な法的救済措置が準備されています。
しかし、営業秘密侵害罪は親告罪とされているため(同法第21条7項)、被害者の告訴がなければ起訴できませんが、公判(刑事裁判のことを公判といいます。)は公開が原則とされているため(日本国憲法第82条1項、37条1項)、公判で営業秘密が漏洩することを懸念するあまり被害者が告訴を躊躇してしまうことが問題とされました。
そこで、裁判所は、営業秘密侵害罪に係る事件を取り扱う場合においては、当該事件の被害者若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該事件に係る営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項(営業秘密構成情報特定事項)を明らかにされたくない旨の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(秘匿決定)をすることができるものとされ(同法第23条1項)、必要があれば、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定で、営業秘密構成情報特定事項に係る名称その他の表現に代わる呼称その他の表現を定めることができる(呼称決定)ものとされました(同法23条4項)。
これにより、営業秘密侵害罪に係る事件を審理する公判においては、秘匿決定等により、営業秘密を構成しこれを特定させる事項が秘匿されることが保障され、被害者は安んじて刑事告訴に踏み切ることが可能となります。
秘匿決定の申出は、あらかじめ検察官に対し行うものとされており(同法第23条2項)、通常は、捜査の段階で担当警察官及び検察官と協議し、秘匿決定の申出がなされるべく営業秘密の内容やその秘匿の必要性、営業秘密構成情報特定事項の範囲等につき綿密な打ち合わせを行うことになるものと思われますが、秘匿の必要性や営業秘密の内容及び営業秘密構成情報特定事項の範囲等については、それらの説明を検察官らに対し行うに際し、平素から営業秘密を保全しその内容等に精通している秘密管理者の協力が不可欠となりますし、顧問弁護士等の法律の専門家の関与も極めて重要になりますので、顧問弁護士を持たれている企業におかれては、顧問弁護士に秘密事項を充分、理解してもらい侵害を受けた際には直ちにその救済に動いてもらうべく営業秘密に関する定期的なカンファレンスを行うことが大切となるでしょう。
企業法務・労働問題について法律相談を希望される方 →
法律相談のページへ
知的財産について詳しく知りたい方 →
知的財産特集のページへ
京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
ページトップへ
個人情報取扱いの指針
当法律事務所は、個人情報の保護に関する法律及びこれに関連する政令、ガイドラインを誠実に遵守し、提供された個人情報を適切に保護致します。
当サイトにおいて提供を受けた個人情報は、法律相談及びこれに基づく法律事務の範囲でのみ利用するものとし、当サイトにおいて表示する当法律事務所の役務において提供を受けた個人情報については、提供者が提供の際、明示の反対の意思を表示されない限り、当該役務遂行の目的の範囲で当法律事務所が当該個人情報を利用することについて同意されたものとみなします。
当法律事務所は、法律相談及び法律事務を承るに際し、犯罪収益の移転及び資金洗浄防止の目的で、法人、個人の身分確認のため必要な個人情報を含む身分確認情報のご提供を求めることがあります。この目的で取得した個人情報については、前記目的の範囲に属するものと致します。
個人情報提供者が、当法律事務所の内規において定められた保存期間内で、当法律事務所が保存している当該提供者の個人情報について開示等の請求をされる場合は、当法律事務所所定の手数料及び個人情報提供者の身分確認のための資料をご提出いただく必要があります。この資料は、開示等請求者の身分確認のためにのみ使用し、開示等の後は速やかに破棄致します。