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著作財産権と著作者人格権の慰謝料

Corporate Law

知的財産特集で世の中にまん延する著作権侵害についてのタイトルで著作権侵害が往々にして行われていることについてご説明しましたが、我が国では、著作権等知的財産権に対する理解が充分、国民一般の間に浸透しておらず、平気で著作権を侵害する人の存在が後を絶ちません。インターネットが普及した今日、ネット上の名誉権やプライバシー権侵害とともに、特に問題となるのがこの著作権侵害です。企業法務の立場からは、営業上の信用を害する虚偽情報の流布や著作権や商標権等を侵害する行為の有無を特に監視することが課題となります。

ネット上の名誉や信用等の侵害に対する対処と課題(特に、プロバイダー責任の問題について)については別の項目に譲るとして、本稿では、著作権侵害の問題のなかでも、著作財産権と著作者人格権の関係についてご説明することいたします。

著作権には、複製権(著作権法第21条)や公衆送信権(著作権法第23条)等の著作財産権のほか公表権(著作権法第18条)や氏名表示権(著作権法第19条)、同一性保持権(著作権法第20条)といった著作者人格権があります。著作財産権と著作者人格権はそれぞれ別種の権利であり、前者には譲渡性や相続性が認められるのに対し、後者は帰属上の一身専属権であり(著作権法第59条)、譲渡性や相続性は認められません。従って、著作物について著作権譲渡契約を締結される場合は、これらの権利の相違を充分考慮し、契約の効力が及ぶ範囲を充分、吟味することが必要です。

著作権には、著作財産権と著作者人格権が認められることから、一つの著作権侵害行為が著作財産権と著作者人格権の複数の法益を同時に侵害する場合があります。例えば、著作権が成立している他人の著作物の一部を切除・改変して複製した場合、著作者人格権としての同一性保持権と著作財産権としての複製権侵害が問題になる余地があります。この場合、著作財産権侵害による財産的損害については、その額を算定し、侵害者に対し損害賠償責任を追及することは当然ですが、精神的損害については、著作財産権侵害による精神的損害のほか、著作者人格権侵害による精神的損害が同時に問題となります。この相互の精神的損害は両立する関係にあることから、両者の賠償(慰謝料の請求)を訴訟上併せて請求する場合には、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきであるというのが最高裁の判例(最高裁昭和61年5月30日第2小法廷判決)です。

著作権法第20条1項は、著作者人格権としての同一性保持権について「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と規定しています。私は、以前、弁護士会で、ある弁護士から著作者人格権が私に帰属しているものと思われる著作物の改変を強く求められたことがあり、著作権に対する理解に乏しい弁護士の存在に驚愕したことがあります。知財の法律相談は知財に積極的に取り組む法律事務所にご相談に行かれることをお薦めいたします。

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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
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