製造物責任法と開発危険の抗弁
Corporate Law
製造物責任法に基づく損害賠償責任が認められるためには、
- ①製造物が通常有する安全性を欠いていること、すなわち、製造物に「欠陥」が認められること、
- ②製造物の「欠陥」により損害が発生したこと、
- ③欠陥と損害の間に因果関係が認められること
が必要です。折りたたみ式自転車を購入し乗車したところ、乗車中に前輪が外れ大怪我をしたという設例では、本来、外れてはならない「前輪」が外れるという安全性の欠如が認められ製造物の「欠陥」を窺うことができ、この欠陥により自転車を購入し乗車されていた方が「大怪我」という身体傷害の損害を被られたわけですから、当該折りたたみ式自転車の製造業者等は製造物責任法に基づき被害者に対し損害賠償責任を負担する余地があります。
別項で既にご紹介いたしましたが、製造物責任法は拡大損害の賠償責任を予定している法律ですので、先の例で、梱包されていた自転車を取り出したところ、乗車前に前輪が外れてしまったような例では、製造物責任は通常、問題になりません(同法第3条但書)。
製造物責任法は、不法行為責任(民法第709条)を追及する場合と比較して被害者の立証の負担を軽減させるため制定された側面を有しますが、このことは、他面において、製造業者等に対しその責任の負担させる余地を拡大させることを意味しますので、製造業者等が訴訟リスクを慮るばかり、技術や製品の開発を躊躇する事態を招きかず、社会経済の発展が期待できないことになってしまいかねません。
そこで、製造物責任法は、「当該製造物を製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」を製造業者等が立証すれば免責されることを認めており(同法第4条1項1号)、これを「開発危険の抗弁」といいます。
ただ、この開発危険の抗弁は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学水準」に従い製造等したかどうかがその判断基準とされているため実務的には、抗弁が認められる可能性は極めて少ないものと理解されています。
製造物を引き渡した当時の入手可能な文献等により製造物の安全性の欠如をもたらす危険性の認識が認められる可能性があればこの抗弁が認められる可能性はないと考えるべきでしょう。
ですので、製造業者等は、製品の研究、開発、販売に際して、多角的な視点から可能な限り多くの情報を入手し、製造物の安全性の確保に万全を期す努力が必要となります。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
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