製造物責任法と輸入業者
Corporate Law
製造物責任法というと製造物を製造または加工した製造業者に対しその責任を追及するための法律であると思われる方も多いですが、製造物責任法により責任を負担することが予定されている「製造業者等」には、製造物を業として製造、加工した製造、加工業者だけではなく、製造物の製造とは無縁な輸入業者も含まれます(同法第2条3項)。
製造物は、製造業者⇒卸売業者⇒小売業者⇒消費者へとその流通経路に従い転々と移転し最終消費者へと渡りますが、製造物責任法は、その制定の動機が製造物の欠陥による被害から消費者を救済することにあったため、消費者保護の視点から製造物を製造または加工した製造、加工業者だけでなく、製造物を流通過程に置いた輸入業者にもその責任を負担させることで消費者の保護を図っています。
ですから、物の製造とはまったく無関係な製造物の輸入業者も国内に製造物を流通させた者として製造物責任を追及される余地がありますので注意が必要です。
製造物責任法は、消費者保護の側面を有してはいますが、消費者契約法が消費者保護の視点から「消費者」を事業活動とは関わりのない個人と定義し(消費者契約法第2条1項)、保護対象者を限定づけているのに対し、製造物責任法は被害者の範囲を限定する規定を特に設けてはいませんので、事業活動とは無関係な個人消費者だけでなく、企業等の法人が被害を受けた場合も製造物責任法により保護されることになります。
製造物責任法は、拡大損害の賠償(同法第3条参照)を予定していますから法人が被害者である場合その損害額は相当高額になる可能性があります。
製造物を法人相手に輸入販売される輸入業者の方は、製造物責任保険(PL保険)に加入する等リスクヘッジを図ることも大切ですし、製造物責任の合理的な負担を視野に入れた契約書の策定が課題となります。
輸入製造物に製造物責任法が規定する「欠陥」が認められるため被害を受けた被害者は、製造物を製造または加工した海外の業者だけではなく、製造物を輸入した国内の輸入業者に対してもその責任を追及することができますので、海外の製造業者に対し訴訟を提起しその損害賠償責任を追及することなく国内の輸入業者に対し損害賠償を求めることができます。
ですから、被害者の訴訟提起の負担は随分、軽減される余地があります。
また、輸入業者が外国法により設立された外国法人であっても、原則として「製造物(生産物)の引き渡しを受けた地の法律」により製造物責任の問題は規律されますので(法の適用に関する通則法第18条)、我が国で製造物の引渡しを受けた消費者等被害者は、原則として、物が生産された外国の法律によることなく、我が国の製造物責任法に従い当該外国法人たる輸入業者に対し責任を追及することができます。
輸入業者の方は製造物責任法に対する理解を深めておくことが大切です。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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