消費者契約法と説明義務
Corporate Law
消費者契約法は、事業者と消費者との間で締結された消費者契約について、民法の取消事由(民法第96条、詐欺・強迫等)を拡張し、一定の場合に消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取消すことができるものとしました。
消費者契約法所定の取消事由としては、
- ①事業者が重要事項について異なることを告げることにより告げられた内容が事実であると誤認した場合(重要事項に関する不実の告知)
- ②物品、権利、役務その他消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価格、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供し、提供された断定的判断の内容が確実であると誤認した場合(断定的判断の提供)
- ③重要事項又は重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実を故意に告げなかったことにより当該事実が存在しないと誤信した場合(重要事項又は重要事項関連事項に関する故意による不利益事実の不告知)
- ④事業者に対し、消費者が消費者の住居又はその業務を行っている場所から退去すべきことを要請したにもかかわらず事業者が退去しない場合に消費者が困惑して契約の締結に至った場合(事業者の不退去)
- ⑤事業者が消費者契約の締結について勧誘している場所から消費者が退去する旨の意思を表示したにもかかわらず、事業者が消費者を退去させず困惑して契約の締結に至った場合(事業者による退去妨害)
等があり(同法第4条)、これらの事由が存在する場合(法改正により、その他の取消事由が拡張されています。同法第4条3項四号以下参照)、消費者は契約の意思表示を取消すことが可能です。
消費者契約法は、民法の取消事由を拡張して意思表示の取消可能な範囲を一定の範囲で拡大させてはいますが、消費者契約を締結するに際し、事業者がいわゆる「説明義務」を充分、尽くさず、充分な情報を消費者に提供しなかったことを理由に消費者契約締結に至る意思表示を取消すことまでは認めていません。
同法は、「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものとなるよう配慮するとともに、消費者契約の締結について勧誘するに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他消費者契約の内容についての必要な情報を提供するように努めなければならない。」と定め、消費者の権利義務その他消費者契約の内容についての情報提供については事業者に対し努力義務課すものにとどめています(同法第3条1項)。
物品、権利、役務その他当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容、対価その他の取引条件で消費者契約を締結するかどうかの判断に通常影響を及ぼす事項が消費者契約法上の「重要事項」であり(同法第4条5項)、重要事項について不実事項を告知した等の場合には、契約の意思表示を取消すことができますが、情報の提供については同法が努力義務にとどめている関係上、契約の内容や取引条件等の説明が不充分であることを理由に契約の規範的拘束力を失わせることは困難であるものと思われ、いわゆる「説明義務違反」の問題は、事情次第で損害賠償責任を生じさせるにとどまるものと思われます。
また、説明義務が仮に認められる場合でも、説明の方法は法律が書面によることを要請している等の特段の事情がない限り、事業者の合理的裁量に委ねられ、その程度も客観的に得心を得させるものにとどまるもの解すべきです。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
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