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秘密情報を守るために最も大切なことそれは…

Corporate Law
退職した役員や従業員等が秘密情報を不正に利用しているとしてご相談を求められる経営者の皆様が増えています。
法的には、不正競争防止法や秘密保持契約、秘密保持義務を含む役員規定、就業規則等の検討が考えられます。
不正競争防止法においては、秘密情報が同法所定の「営業秘密」に該当し、同法に違反する事実が認定されれば、侵害行為の差止め(同法第3条)が認められるほか、損害賠償請求(同法第4条)や信用回復の措置(同法第14条)等の法的保護を受けることが可能となります。
不正競争防止法は、刑事罰を設けていますので、同法の罰則に抵触する行為が認められる場合には、刑事告訴をすることにより刑事事件として営業秘密を侵害し不正行為を行った者に対する処罰を求めることも可能です(同法第21条3項)。
営業秘密の侵害に係る刑事手続については、営業秘密の秘匿決定等、刑事手続において営業秘密が漏洩されることがないよう配慮すべく新たな規定が創設されました(同法第23条以下)。詳細は別項でご説明いたします。
また、秘密保持契約や役員規定、就業規則等で役員や従業員等に秘密情報の保持義務を負担させている場合には、退職した役員や従業員等に秘密保持義務違反の事実が認められ、当該義務違反に基づく損害の発生が認められるようであれば、その損害の賠償を役員や従業員等に求めることが可能です。
これらの法的保護は、秘密情報を保有されている各企業が、秘密情報の管理、保全に対し、平素の業務の過程において深い関心を示し、配慮されてきた活動の積み重ねの成果とその内容により、結論的にはその保護の可否が左右される問題で、平素の業務において経営者が秘密情報の管理、保全に充分な配慮を払っていないようであれば、トラブルが生じた際にその保護を期待されるとしても厳しい結論に至る可能性が高いことを覚悟していただかなければなりません。
退職した役員や従業員等との間で秘密情報の不正流用が問題とされトラブルが発生している事案を考察すると、企業が役員や従業員等の在職中の功労を軽視し、役員や従業員等の企業に対する従前の貢献を正当に評価しなかったことがトラブルの背景となっている事案が散見されます。
人は「心」を持っています。
平素、懸命に企業に貢献している役員や従業員の功績を無視し配慮を欠く対応をとれば企業に対する忠誠心が失われていくのもやむを得ないことです。
秘密情報流出の契機は、企業内部においてその結束力に影を及ぼす人間関係の軋轢の存在こそが大きな要因であることが少なくありません。
経済のグローバル化が進行し企業間競争や少子化が激化するなかで、より有能な人材を確保する動きが加速化し、あるいは労働市場全体の流動性に拍車がかかる時代の潮流のなかで、企業のなかでは、今後、安易に役員や従業員を切り捨てる動きが広がっていくことが懸念されます。
目先の合理化に心を奪われると思わぬ副作用が生じてしまいかねません。
徳川家康の名言として知られている言葉に「水はよく船を浮かべよく覆す」という言葉がありますが、この言葉の真意は実効的な秘密保持政策のうえでヒントになるものではないかと思われます。
秘密情報を共有している役員や社員同士の忌憚のない「飲み会」での交流も社内の結束力を高め背信的な情報の流出を防ぐうえで意外と重要な役割を果たすかも知れません。
ただし、私のように飲み過ぎるとぽろぽろと秘密を漏らしてしまうことになるかも知れませんのでくれぐれも深酒にはご用心!
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
京都府長岡京市滝ノ町1丁目5-14 TEL:075-950-0648
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