秘密情報と個人情報

Corporate Law
企業等が特定の企業等と研究開発その他の事業を共同で遂行する場合に、秘密保持契約(NDA)を締結することがしはしば行われています。
共同事業を遂行するに際し、保有する秘密情報を相手方に開示する場合があり、開示情報の秘匿性を担保し、情報の価値を保全するために秘密保持契約が往々にして交わされています。
秘密保持契約においてその保護が意図される「秘密情報」には、技術的情報もあるでしょうし、営業戦略上の情報もあるでしょうが、それらの情報は、それらの情報を保有している企業等がその情報による将来の経済的利益を期待してその情報の保護に積極的な関心を示しその保護に努めているものです。
他方、この秘密情報とは別に企業等が保有する情報にはいわゆる「個人情報」があり、この個人情報と秘密情報は、本来、まったく異なった性質の情報ですが、両者は、時に混同される場合があり、秘密保持契約の策定に際してもこれらの各情報を混同して契約書を策定されている場合が散見されますので注意が必要です。
個人情報は、情報を保有している企業等の経済的利益を確保するためではなく、情報の主体である個人の人格的利益を保全するためその保護が要請されているものです。
ですから、秘密情報と個人情報は、その保護の目的や性質が異なりますので、これらの情報はまったく別種の情報としてその取扱いに対してはその保護の目的や性質の違いに応じて注意が払われるべきものです。
ただ、秘密情報と個人情報とは本来、別種の情報と評価できますが、実際的には両者を泰然と区別できない場合が存在することを否定できません。
例えば、顧客の氏名、電話番号、職業、収入、購入実績、購買の傾向等を記載した顧客リストは、営業戦略上の重要な秘密情報として位置づけられる場合も存在するでしょうが、これら顧客リストに記載された情報は同時に個人情報としての性質を持つものです。
これは、本来、別種であると理解される秘密情報と個人情報とが混在している場合であり、秘密保持契約書を策定されるに際し、同一の契約書において秘密情報と個人情報の取扱いに関する条項等を設定される場合には、情報の性質次第では、秘密情報と個人情報とが重なる場合があることを充分、念頭におき各情報の適切な規律を図ることが大切です。
また、顧客リストに記載された情報もその情報の性質次第では、個人情報として位置づけられるにとどまらず、プライバシー権あるいは一般的人格権によって保護される人格的価値として法的保護の対象とされる場合も考えられます。
例えば、性力増強剤や「かつら(鬘)」の購入者リスト等は、個人情報の保護に関する法律とは無関係にそれらの情報を流出させた場合には、プライバシー権あるいは人格権侵害を構成するものとして不法行為責任を追及される余地がありますので、情報次第では特別の配慮が必要となります。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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