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『企業法務・労働問題・知的財産について』
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個人情報の保護とプライバシーその②
Corporate Law
個人情報の保護に関する法律が保護する個人情報とプライバシー権を構成するプライバシーは本来、その性質を異にするものではありますが、プライバシー権の外延が不透明であること等から個人情報保護に関する法律で保護される個人情報がプライバシーとして理解されプライバシー権によって保護される場合を想定でき、両者の間に密接な連関が認められる場合が存在することを否定できません。
プライバシー権は、英米法(アメリカに端を発する概念です。)の世界で生成されてきたものですが、このプライバシー権は、大陸法(特に、ドイツ)の世界で概念形成されてきた一般的人格権と類似する側面があります。
一般的人格権は、生命、身体、名誉等の個別的人格権の総称を指し、我が国では、一般的人格権に関し、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体を人格権ということができ、このような人格権は何人もみだりにこれを侵害することは許されず、その侵害に対してはこれを排除する権能が認められなければならない。」(大阪高裁昭和50年11月27日判決)と指摘され、次いで、最高裁が個別的人格権としての名誉権に関連し、「人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるから、名誉侵害の被害者は、人格権として名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。」(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決)と判示し、人格権(一般的人格権)の概念について実務上、その存在に触れましたが、一般的人格権の内実や一般的人格権と個別的人格権との関係についてはこれらについて詳細に触れるものがなく、それらの理解については混沌としているのがその実情です。
一般的人格権と個別的人格権との関係については最高裁が上記判例で「人格権としての名誉権」と指摘しているところから一般的人格権が生命、身体、氏名、名誉等の個別的人格権の上位概念であるとする理解も考えられなくはありませんが、寧ろ、時代の進展に応じて個別的人格権を生成する母体であり淵源となる概念と理解すべきものと考えます。
プライバシー権については、これを個別的人格権と理解する考え方もありますが、プライバシー権により保護されるプライバシーの外延が不透明であり、時代の進展に応じてその中に包摂される人格的利益を取り込み生成される権利であると考えると、プライバシー権は個別的人格権というよりも一般的人格権に近い性質の権利と認められなくはないと思われます。これらプライバシー権や一般的人格権は機能的には個別的人格権を補充する性質を持つものです。
企業法務に携われている皆様方は個人情報とプライバシーの性質の差異は別にして、入手及び保有されている個人の特にセンシティブな情報(金融分野の機微情報に限りません。)の取扱いには充分な配慮を払うべきことが大切であると思われます。
個人情報保護に関する法律が、個人情報の入手過程について開示を求めるものではなくても、入手過程について疑念を抱かれないよう配慮する必要がありますし、同法に触れなくても事実関係次第ではプライバシー権を侵害する場合もありえますのでその取扱いには慎重な配慮が必要です。
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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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