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非公開会社の株式の価格決定 その2

Corporate Law

非公開会社の株式の評価を裁判所が行う評価基準としては①配当還元方式や②収益還元方式③類似業種比準方式のほかに④純資産方式があります。

④純資産方式は、バランスシート(貸借対照表)の純資産額を発行済株式数で除して一株あたりの純資産額を算定し株式の現在価格を算定する方式です。簿価純資産方式と時価純資産方式とがありますが、時価による算定の方式の方が理論的には算定時における正確な企業価値を割り出すことができるものと思われます。

これら各方式には、亜種と評価できる方式もありますが、これらの方式を単一的に採用するのではなく併用しながら株式の価格が算定されることも多いです。

土地の資産評価に固定資産評価額や路線価等、各種の評価が存在することからお解かりいただけますように、市場流動性のない譲渡制限株式の評価についてもその価格の算定方式により異なった価格が算定されることは否定できず、譲渡制限株式の価格の算定は極めて難しいものとなっています。

③類似業種比準方式は、相続財産評価のための基準として利用されますが、税法上に基準に従って株式の価格を算定することが適正な価格の算定といえるかは疑問であり、同様の疑問は、交通事故の物的損害に際し、しばしば、損害保険会社が物的損害の算定につき税法上の減価償却を考慮して被害を受けた物の価格の減額を主張することがありますが、税法上の減価償却率に依拠して物の時価を算定することは、被害者に発生した損害を公平の理念に従い填補するという損害賠償制度のもとで、視点を異にする算定基準を導入するもので、損害の算定として適切な価格を反映するものであるか疑問があるものと考えています。

④純資産方式、特に時価を基礎とする時価純資産方式は、株式会社が清算、解体される場合には、企業価値を算定する方式として機能しますが、企業が積極的に活動しており、今後の収益の向上が積極的に期待できる状況では正確な企業価値を算定するための指針として機能しないものと考えられます。

従いまして、非公開会社の株価の価格決定は、単一の基準ではなくアド・ホックな政策的な考慮を基礎に各種の基準方式を併用しながら割り出されることは避けられないものといえるでしょう。

非公開会社の取締役としては自己株式を取得する場合等を含め、自社の株式の価格につき一定の理解を得ておくことが大切となるでしょう。

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京都双葉法律事務所 弁護士 中井基之(京都弁護士会所属)
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